白い立体を描く

年末~2月にかけて数名の方にお願いした、ケント紙の立体を描く課題をご紹介いたします!

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今回は、配布したケント紙を使い、即興で簡単な立体を作ってもらいました。その後、自分が作った立体をモチーフにデッサンや着彩の制作を行いました。
鉛筆デッサンから色彩構成まで、幅広い力作が集まっております!!

 

 

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「トンネル」 kakishima /紙、鉛筆 (38×27cm)

 

<紙で造形をするのが一番難しかった気がします。色々試すうちにイメージが広がっていき、入口と出口が沢山あるもの、というイメージでこのタイトルにしました。>
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タイトルと立体の抽象的な距離感が絶妙ですね。シンプルな構成ですが、大小様々な空間のおかげで、画面にメリハリが生まれています。あちらでは外側だと思っていた部分が、こちらでは内側になる、入り組んだ関係が描きがいのあるデッサンでした。
細かな光の表情はもちろんですが、全体の明暗も描き分けられているため、全体の印象がはっきりと伝わる作品となっています!

 

 

 

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「Air  Valentine  Flower」 yamano /紙、鉛筆(38×27cm)

 

<空気の花を束ねている、ブーケをイメージしました。自分で立体を作ることは難しかったですが、楽しく作り、描くことができました。>
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独特の視点からのアプローチが面白いデッサンです。バレンタインチョコレートの細工からインスピレーションを受けて作られていますが、作者の世界観がバックボーンとなり、作品に広がりを見せていますね。立体自体ではなく、空間がお花という設定も非常に面白いです。
また曲線の中に一か所だけ入った直線が、繊細なタッチと絡み合い不思議なリズムを生んでいます。

 

 

 

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「ぐるぐる」 四辻秋桜 /紙、色鉛筆、コピック(32×41cm)

 

<どこまでも続いていく、あるいは途中で途切れてしまうようなDNAをイメージしました。
自分でモチーフを作ることが初めてだったので難しかったです。>
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リボン型とクレープ型の立体2点がモチーフになっています。モチーフをヒントにして広がった背景の空間処理がおもしろいですね。サイ・トゥオンブリのようなぐるぐるですが、立体としてのイメージと、DNAのイメージとが複合的・装飾的に混ざり合って、独自の作品空間が生まれています。色鉛筆のピンク上の薄いグレーと、マーカーの濃いピンク上のブルーの濃淡の対比など色彩の構成もよく練られています!

 

 

 

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「ほら貝としての自覚」 KATAYO /紙、鉛筆(38×27cm)

 

<ケント紙で形を作る所からはじまり、質感や影を出していくのが難しかったです。
ほら貝という形を与えられた紙が完成にしたがってほら貝として自覚していくようなイメージです。>
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いざやってみると分かりますが、実際にケント紙で立体を作ろうとすると、なかなかうまく思う形になってくれません。こちらの作品では、紙を短冊切りにして1つずつの単位を作ることで解決策を見出し、建築モデルのような美しい立体を作ってくれました。
中に入って行くこともできそうなので、タイトルを見ると思わずドキリとさせられますね。静止していた物体が、もぞもぞと動き出しそうです!ケント紙の質感と、紙と紙が重なった部分の空間が心地よいデッサンです!

 

 

 

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「凪」  ぎ /紙、ポスターカラー(52×36cm)

 

<ほのかに感じるような柔らかい海の風をイメージしました。全体的に淡い色にして、優しい印象になるようにしました。
紙で作った立体をグレースケールにして、紙(人工物)と自然との差をつけようと考えました。>
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渚と立体のダブルイメージを描くことで、柔らかな海風を表現した色彩構成です。色数を抑えて明度をコントロールした画面がとても爽やかですね。
サーモンピンクと青緑が美しく感じられる画面です。砂浜のサーモンピンクは立体の明るいグレーと明度を合わせています。
立体は部分拡大となっていますが、実際の立体も、細い線を絡み合わせることで凪をイメージさせる良い作品を作ってくれました!

 

 

即興で作ってもらったこともあり、立体は似たようなモチーフになるかと思いきや、本当に人それぞれ、独自のアイディアを出してくれました。
また、白というニュートラルな物体のおかげで、絵画としても思わぬ発想が生まれたのではと思います。

他の人にもぜひトライしてもらいたい課題なので、そのうちにまた第2弾ができればなと思っております!

タブノキ 夏の動物園 ~Part.2

タブノキ 夏の動物園 ~Part.2

引き続き、タイミングが合った方々にお願いした動物作品をご紹介いたします!

 

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「マン と  ヒヒ」
勝田伸治さん  アクリル、クレヨン/紙

 

 

 

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「写真模写-ミミズク」
柿嶋圭子さん  鉛筆/紙

 

 

 

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「鹿の親子」
高木一文さん  水彩、色鉛筆/紙

 

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「鷲」
高木一文さん  水彩/紙

 

 

 

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「ゴリラ」
杉江隆さん  アクリル、色鉛筆/紙

 

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「しまうま」
杉江隆さん  アクリル、鉛筆/紙

 

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作者の個性と画材の個性の違いによって、魅力的な作品集になったと思います!

動物の違いはもちろんですが、画材や描き方の変化で、こうも違うものかと、あらためて絵の表現の幅広さに驚かされます。
アクリル絵の具の即興的な強いタッチや重ね塗りの透明感、水彩の柔らかな水の表情、そして時間をかけて描き込まれた鉛筆描写など、各画材それぞれの良さが輝いてくれたのではないでしょうか。

 

9月にpart.3を掲載する予定です。

ぜひぜひお楽しみに!!

 

ローファーの靴 / 鉛筆、紙

さらにもう一つ、柿嶋さんの最新作です。

ご自身が実際に使っている靴の作品です!

 

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「ローファーの靴 」 柿嶋 圭子 さん 380×540 mm (鉛筆、紙)

〈作者コメント〉時間をかけて描く事ができて、とても楽しい一枚でした。革と紙のリボンの質感の違いを表現できているといいのですが・・・。

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細部まで見ごたえのある作品です!
ローファーの飾りや、細かな光の強弱などじっくりと描きこまれています。

少し右よりの構図が、しっかり描きこんでいる分、大きく残した余白が生かされて絵画的な良い雰囲気に仕上がっています。左側の靴と、紙テープと、影が作る空間に柔らかな光が感じられてとてもきれいですね。

パンプス+ローファーという変わった形状の靴だったため、形を追っていくのが大変だったと思われますが、途中でも根気強く修正を加えて説得力のある画面になりました。

靴底のゴムの質感、そして右側の細かな線が重ねられた革の質感など気持ちが良いですね。

丁寧に描き込まれた完成度の高い一枚です!

 

柿嶋さんには、ぜひ難易度の高いデッサンにチャレンジしていって欲しいですね!

 

『牛乳パック』 『植木鉢、木片、布』 / 鉛筆、紙

今回は、毎週デッサンに取り組んでいる柿嶋圭子さんの作品をご紹介していきたいと思います!

まずは、タブノキで初めて描いてもらった単体デッサンです。

 

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「牛乳パック 」 柿嶋 圭子 さん 380×270 mm (鉛筆、紙)

〈作者コメント〉 教室に通い始めて最初に描いた作品です。十数年ぶりのデッサンなので、緊張しながら描いていました。できる限り写実を目指した作品です。

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文字やデザインも入れて完成させています。
リサイクルマークが工業製品らしいポイントになっていますね。
青と白のメリハリが利いた見やすいデッサンです。

経験したことのある方は分かると思いますが、印刷された文字やデザインを写して描くのは、結構大変です。面の傾きに文字の傾きも合わせなければいけないので、難易度が高い作業です。根気が要ります。
そのため、文字は簡略化して大丈夫ですよ、とお伝えしていますが、たまに文字をいれて、腰を据えて描いてくれる人がいます。

柿嶋さんも、じっくりと取り組んでくれました。

写真だとよく見えないのですが、青い部分のコーティングされた紙の質感なども丁寧に追ってキリリとした表情になっています。
 
記念の一枚です!

 

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続いて、植木鉢とコーヒー蓋の木片で構成された課題デッサンです。

 

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「植木鉢、木片、布 」 柿嶋 圭子 さん 380×540 mm (鉛筆、紙)

〈作者コメント〉 植木鉢と木片と布、3つも時間内に描ききれるかな、と思いつつ進めた憶えがあります。質感の違いはデッサンの重要な要素の一つですが、表現できたかな、と自画自賛した一枚です。

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この課題のポイントは植木鉢、木片、布の3つに囲まれた空間を表現することにあります。
木片から落ちる影と、向こう側の空間から差し込む光がよく観察されているのが分かりますね。
植木鉢の入口と布の上の空間の表情もきれいです。

細かい光の加減を丁寧に追うことで、木片と、植木鉢の質感の違いも明確にしています。
木片の直線がしっかりと処理してあるので、木の重みも伝わってきますね。

比較的短時間で仕上げてもらいましたが、細かいところに手の行き届いたデッサンに仕上がりました!

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次回に続きます・・

 

 

「身内のクツ」 「変わるパイナップル」 /デッサン

海野峻宗さんの作品です!

ご紹介するタイミングを逃してしまっていたので、デッサンを描き上げてからだいぶ時間が経ってしまいました・・・・・・が、タイトルをつけることで、鮮やかな息吹を吹き込んでくれました!

 

 

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「身内のクツ 」 海野 峻宗 さん 380×540 mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 現在、片方のクツが行方知れずです。

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革製の赤い女性ものの靴です。

裏返しにした片側がほぼ正面を向いている難しい配置です。靴のワインレッドと、裏側の黒いゴム部分の色味が似ているのでとても描きづらかったはずですが、奥行きがつぶれることなくしっかりと描きあげられています。ゴム部分の鈍い光の反射と、革のつやっぽさの違いもよく観察されています。

海野さんのデッサンは、淡い光が丁寧に表現されるところが魅力です。

時間をかけて、消して描いてという作業を繰り返していくので、細かなところが繊細に仕上がっています。左側の靴の飾り縫いの部分も、細かいところをただ「描き込む」と説明的になってしまいがちですが、淡い光と影を丁寧に追っているのが伝わってきますね。

少し突き放すようなタイトルも、背景にある物語を想起させるようで、作品を魅力的に仕上げています!

 

 

もうひとつデッサンをご紹介します。

 

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「変わるパイナップル 」 海野 峻宗 さん 380×540 mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 日がたつにつれて姿が変わってゆくパイナップルの生物感と、時間の干渉を受けない電球とレンガの姿が表現できていると願います。

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難しいパイナップルに果敢に挑んたデッサンです。

描くのが大変だったこともあり、パイナップルが徐々にしおれていき、何度か代替わりしながらがんばって描き上げてくれました。

レンガと電球、パイナップルにメリハリがあるのがとても見やすいです。

レンガはまっすぐな線がしっかりと入り、ずっしりとした重みがよく表現できていると思います。それに対して、パイナップルは柔らかな光を感じさせるような仕上がりになっています。
細かな描写を追いつつも、ボリューム感を意識して、回り込みも描けています。
レンガとパイナップルの間の空間のおかげで、全体の奥行きも伝わってくるデッサンですね。

 

 

 

 

「電球、ライムとれんが」「植木鉢と板」 / デッサン

今週は井村さんの作品をいくつかご紹介します!

まずは、デッサンカリキュラムでお馴染みのレンガと電球の組み合わせデッサンです。

 

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「電球、ライムとれんが 」 井村 三佳さん 380×540mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 電球の形、透明感、光り具合にはじめは大変苦労しましたが、対象物をしっかり見てじっくり描きこんでいくと、きちんと表現できることを学びました。

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あっという間に描き上げてくれたデッサンでした!井村さんは、間違っていても恐れずに、思い切りよくざくざく描いていきます。そのため、早い段階で全体像が見えて来るので、レンガや電球の形のゆがみの修正も比較的容易にこなされていました。

なんと2枚目のデッサンですが、全体に同じように手が届き(これが意外とできない人が多いのです!)まとまりがありますね。接点や影などのモチーフ同士の関係性も、よく見ながら客観的に対象を把握しています。

とりわけ、レンガとライムの描き分けがとてもよくできていると思います。

濃い緑色のライムと赤いレンガの明度が似ているため、同じような質感になってしまいがちですが、ライムの表面の小さなでこぼこを丁寧に追っているので、同じ鉛筆の濃さでも一目で違いが分かります。

布の白さをポイントにして、メリハリのあるデッサンに仕上がっています!

 

あわせてもう一枚、デッサンをご紹介します。

 

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「 植木鉢と板 」 井村 三佳さん 380×540mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 植木鉢の形や奥行きを表現するのに苦労しましたが、先生のアドバイスに従っていくうちに自然と出来上がってきて描いていて楽しかったです。

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こちらもさくさくと形を捉えてくれました。板はコーヒーの樽蓋の木片ですが、長さがあるため紙に収めるのが少し難しいモチーフです。
植木鉢の手前から外縁の底への奥行きや、底の形を取るのに皆がひっかかるところなのですが、違和感なく仕上がっています。側面の直線から底の曲線への入り方も、とてもよく観察して描けています。

植木鉢の外側の光を丁寧に見ているので、向こう側へまわりこんでいく感じが伝わってきますね。

円が少しよたよたしてしまっているのが残念ですが、内側と外側の整合性は捉えられています。3つのモチーフの色の違いなど、大きな塊としての描き分けもできています。
荒削りなのにも関わらず、大切な要所要所がしっかりと抑えられているので、とても説得力のあるデッサンになったと思います!