「身内のクツ」 「変わるパイナップル」 /デッサン

海野峻宗さんの作品です!

ご紹介するタイミングを逃してしまっていたので、デッサンを描き上げてからだいぶ時間が経ってしまいました・・・・・・が、タイトルをつけることで、鮮やかな息吹を吹き込んでくれました!

 

 

UM_kutsu_web170

「身内のクツ 」 海野 峻宗 さん 380×540 mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 現在、片方のクツが行方知れずです。

____________________________________

革製の赤い女性ものの靴です。

裏返しにした片側がほぼ正面を向いている難しい配置です。靴のワインレッドと、裏側の黒いゴム部分の色味が似ているのでとても描きづらかったはずですが、奥行きがつぶれることなくしっかりと描きあげられています。ゴム部分の鈍い光の反射と、革のつやっぽさの違いもよく観察されています。

海野さんのデッサンは、淡い光が丁寧に表現されるところが魅力です。

時間をかけて、消して描いてという作業を繰り返していくので、細かなところが繊細に仕上がっています。左側の靴の飾り縫いの部分も、細かいところをただ「描き込む」と説明的になってしまいがちですが、淡い光と影を丁寧に追っているのが伝わってきますね。

少し突き放すようなタイトルも、背景にある物語を想起させるようで、作品を魅力的に仕上げています!

 

 

もうひとつデッサンをご紹介します。

 

UM_renga_web170

 

「変わるパイナップル 」 海野 峻宗 さん 380×540 mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 日がたつにつれて姿が変わってゆくパイナップルの生物感と、時間の干渉を受けない電球とレンガの姿が表現できていると願います。

____________________________________

難しいパイナップルに果敢に挑んたデッサンです。

描くのが大変だったこともあり、パイナップルが徐々にしおれていき、何度か代替わりしながらがんばって描き上げてくれました。

レンガと電球、パイナップルにメリハリがあるのがとても見やすいです。

レンガはまっすぐな線がしっかりと入り、ずっしりとした重みがよく表現できていると思います。それに対して、パイナップルは柔らかな光を感じさせるような仕上がりになっています。
細かな描写を追いつつも、ボリューム感を意識して、回り込みも描けています。
レンガとパイナップルの間の空間のおかげで、全体の奥行きも伝わってくるデッサンですね。

 

 

 

 

「電球、ライムとれんが」「植木鉢と板」 / デッサン

今週は井村さんの作品をいくつかご紹介します!

まずは、デッサンカリキュラムでお馴染みのレンガと電球の組み合わせデッサンです。

 

IM_renga_web170

「電球、ライムとれんが 」 井村 三佳さん 380×540mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 電球の形、透明感、光り具合にはじめは大変苦労しましたが、対象物をしっかり見てじっくり描きこんでいくと、きちんと表現できることを学びました。

____________________________________

あっという間に描き上げてくれたデッサンでした!井村さんは、間違っていても恐れずに、思い切りよくざくざく描いていきます。そのため、早い段階で全体像が見えて来るので、レンガや電球の形のゆがみの修正も比較的容易にこなされていました。

なんと2枚目のデッサンですが、全体に同じように手が届き(これが意外とできない人が多いのです!)まとまりがありますね。接点や影などのモチーフ同士の関係性も、よく見ながら客観的に対象を把握しています。

とりわけ、レンガとライムの描き分けがとてもよくできていると思います。

濃い緑色のライムと赤いレンガの明度が似ているため、同じような質感になってしまいがちですが、ライムの表面の小さなでこぼこを丁寧に追っているので、同じ鉛筆の濃さでも一目で違いが分かります。

布の白さをポイントにして、メリハリのあるデッサンに仕上がっています!

 

あわせてもう一枚、デッサンをご紹介します。

 

IM_uekibati_web170_2

「 植木鉢と板 」 井村 三佳さん 380×540mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 植木鉢の形や奥行きを表現するのに苦労しましたが、先生のアドバイスに従っていくうちに自然と出来上がってきて描いていて楽しかったです。

____________________________________

こちらもさくさくと形を捉えてくれました。板はコーヒーの樽蓋の木片ですが、長さがあるため紙に収めるのが少し難しいモチーフです。
植木鉢の手前から外縁の底への奥行きや、底の形を取るのに皆がひっかかるところなのですが、違和感なく仕上がっています。側面の直線から底の曲線への入り方も、とてもよく観察して描けています。

植木鉢の外側の光を丁寧に見ているので、向こう側へまわりこんでいく感じが伝わってきますね。

円が少しよたよたしてしまっているのが残念ですが、内側と外側の整合性は捉えられています。3つのモチーフの色の違いなど、大きな塊としての描き分けもできています。
荒削りなのにも関わらず、大切な要所要所がしっかりと抑えられているので、とても説得力のあるデッサンになったと思います!

 

 

 

レンガ、電球、パプリカ / デッサン

久しぶりの更新です!

今週は小幡さんの3作目のデッサンをご紹介したいと思います!
 

OM_renga_web170

「レンガ、電球、パプリカ 」 小幡 美紗さん 380×540mm (紙、鉛筆)

〈作者コメント〉 物の表面の質感の違いを描きわけるのが難しく 、 そして楽しかったです。

____________________________________

 

初めて挑戦した複数モチーフのデッサンですが、まとまりのある素敵な作品に完成しました!

時間をかけてひとつひとつのモチーフを丁寧に仕上げていますが、全体に同時に手を入れながら進めているので、全体のバランスが良く、3つのモチーフにつながりがあるのがとても良いと思います。

レンガに落ちる影と、向こう側からの光をしっかりと観察して描いているおかげで、電球とレンガの間の空間が見えてきますね。

レンガのずっしりとした感じや、電球の硬質な質感もよく表現できていると思います。
パプリカのつるっとした質感がなかなか出ず苦心していましたが、繊細に観察しながら手が入っているので、気持ちを込めて大切に描いたような印象を受けるデッサンとなりました。
 
これからもぜひ、この雰囲気を大事にしながら、絵を楽しんで描いていって欲しいです!

 

 

電球とレンガとナス / デッサン

今週は、いつも丁寧に作品を仕上げてくれる小林さんのデッサンをご紹介します!

 

 

20131018_renga_web

「電球とレンガとナス」 小林 幸恵さん  B3(紙、鉛筆)
〈作者コメント〉 なすがかわいくて、手をかけました。

____________________________________

電球とレンガとナス、ひとつひとつを丁寧に観察しながら進めていったことがよく伝わってくるデッサンです。
与えられた課題でも、それぞれのモチーフを大切にすることは作品全体の質を上げるものだなと思わせられました。

ご本人のコメント通り、ナスには特に愛着が感じられて、生き生きとした描写が好感を持てます!
(写真だと細かいところが見れず残念です・・・)

小林さんは「抽象画を描きたい」と言ってアトリエに来てくれていますが、写実的な描写にも時間をゆっくりかけ、1枚1枚を着実に仕上げています。小林さんの描く抽象画も楽しみですが、また機会があれば、今度はモチーフをもっと増やしたデッサンを描いてもらいたいです!